強迫性障害とは
強迫性障害とは、日常生活に深刻な支障をもたらす精神疾患で、過剰な不安やこだわりからくる強迫観念や行為が現れることが特徴です。病気であることに気づかない人も多く、その原因や治療法についてはまだ完全には解明されていません。
働く上での困りごと
働く際に強迫性障害が及ぼす影響は多岐にわたります。以下のような問題に直面している方も少なくありません。
- 体調が安定しない
- 長期間の勤務が困難
- 人間関係の構築が難しい
- 就職活動の方針が立てられない
- 就職先が見つからずに不安
強迫性障害の定義
強迫性障害は、不適切な思考やイメージ(強迫観念)による過剰な不安と、その不安を解消しようとする行為(強迫行為)で特徴づけられます。アメリカ精神医学会の『DSM-5』における定義は以下の通りです。
- 強迫観念、強迫行為、または両方が存在する。
- 強迫観念は侵入的で不適切な思考やイメージで、苦痛の原因となる。
- 行為は現実的ではなく、明らかに過剰である。
- これらの観念や行為が人間関係や社会的機能に障害を与える。
強迫性障害の典型的な例
強迫性障害の症状には共通点がありますが、個人によって異なることがあります。代表的な例として、次のような症状が挙げられます。
- 不潔恐怖と洗浄: 過剰に手洗いや入浴を繰り返す
- 加害恐怖: 他人に危害を加えたのではないかという不安
- 確認行為: 戸締まりやスイッチの確認を何度もする
- 儀式行為: 一定の手順を厳密に守らないと不安になる
- 数字や言葉へのこだわり: 不吉な数字や言葉への過剰な反応
このような強迫性障害の症状は、働く上で大きな障害となることがあるため、適切な治療とサポートが必要です。
強迫性障害と併発・類似しやすい疾患は何か?
強迫性障害は多岐にわたる疾患と共起したり、類似の症状を示すことがあります。以下に主な疾患や障害を挙げて解説します。
不安障害との関係
強迫観念による不安が強迫行動の引き金となり、不安障害と混同されることがあるだけでなく、実際に併発することも珍しくありません。
うつ病の併発
強迫性障害の症状としての無意味な行動への無力感や、それによる人間関係の摩擦から、うつ病を併発することも一般的です。
強迫性パーソナリティ障害の併発
強迫性障害の人々は、時に「強迫性パーソナリティ障害」とも診断されることがあります。
統合失調症との類似性
強迫観念は、統合失調症の幻覚や妄想と似ており、見分けることが困難な場合もあります。
発達障害との類似性
特に自閉症スペクトラム障害(ASD)と強迫性障害は、こだわり行動(常同行動)と強迫性障害の症状が酷似していることがあります。
強迫性障害の治療法について
認知行動療法
思考や行動のパターンを変更してストレスを減らす心理療法です。強迫性障害には「曝露反応妨害法」という特別な手法が用いられます。強迫観念に対抗して強迫行為を我慢し、その不安が次第に和らいでくる体験をします。
薬物療法
抗うつ薬のSSRIなどを使用して過剰な不安や恐怖を抑制し、認知行動療法に適応するのが一般的です。薬の効果を感じるまでには数週間かかることがあり、医師との相談を通じて最適な治療を探求します。
強迫性障害のある人が利用できる支援
強迫性障害のある人にとって、多くの支援制度が提供されています。以下は、その主な支援制度の概要です。
自立支援医療(精神通院医療)制度
自立支援医療制度は、通院に伴う費用の自己負担軽減を目的としたものです。デイケアの料金も対象に含まれます。
精神障害者保健福祉手帳
様々な福祉サービスや経済的な支援が受けられます。障害者雇用枠なども利用可能です。
障害年金
生活の一部を支援する障害年金です。年金額は症状などにより異なります。
強迫性障害の治療をしながら仕事をするために
強迫性障害の症状に対処しながら仕事を続けるための支援も多岐にわたります。以下はその概要です。
働く準備をしたい、仕事をする環境に慣れたい
精神科デイケアや就労継続支援事業所など、様々な支援制度があります。
- 精神科デイケア: 日帰りリハビリテーションで、再発防止や入院予防などが目的です。
- 就労継続支援事業所: 体調に合わせた柔軟な働き方が特徴。A型(雇用型)とB型(非雇用型)の2種類があります。
強迫性障害の症状に合わせた適切な支援を受けることで、健康的な生活と仕事の両立が可能です。
強迫性障害との付き合い方と支援体制
就労移行支援の重要性
強迫性障害を持つ方々が職場での理解を求め、就労を希望する場合、不安な点があれば就労移行支援サービスが役立つでしょう。このサービスは、働くための知識と能力の向上をサポートし、体調管理やストレスコントロールなどのセルフマネージメントの教育も提供します。さらに、就職後の職場定着支援も行っております。
障害者就業・生活支援センターの役割
障害者就業・生活支援センターは、障害を持つ方々の職業と生活両方の支援を提供します。職業訓練、企業での職場実習の紹介、健康や財政の管理方法に関する助言などがあります。すでに働いている方へは、職場定着に関する相談も行っております。
強迫性障害のある人が症状とうまく付き合っていくための方法
強迫性障害とうまく付き合っていくためには、認知行動療法の一つである曝露反応妨害法を日常に取り入れるとよいでしょう。強迫観念が起きること自体を受け入れ、強迫行為をせず、不安や苦痛を耐える訓練が重要です。さらに、先延ばしや、いつもと違う行動を取るなどの方法も有効です。全国の患者会への参加や認知行動療法に関連する本の閲覧も改善策として考えられます。
強迫性障害は治る可能性がある疾患で、適切な治療と継続が大切です。症状を軽視せず、医療機関での診断や家族とのコミュニケーションが重要です。様々な支援制度を利用し、専門機関のサポートを受けて、治療と向き合うことが推奨されます。